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二月大歌舞伎 籠釣瓶花街酔醒 [★伝統芸能]

 
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序 幕  立花屋見世先の場
二幕目 大音寺前浪宅の場
三幕目 兵庫屋二階遣手部屋の場/同 廻し部屋の場/同 八ツ橋部屋/縁切りの場/立花屋二階の場
大  詰 吉原仲之町見染の場

佐野次郎左衛門・・・吉右衛門
兵庫屋八ツ橋・・・菊之助
下男治六・・・又五郎
兵庫屋九重・・・梅枝
同 七越・・・新悟
同 初菊・・・米吉
遣手お辰・・・歌女之丞
絹商人丹兵衛・・・橘三郎
釣鐘権八・・・彌十郎
立花屋長兵衛・・・歌六
立花屋女房おきつ・・・魁春
繁山栄之丞・・・菊五郎


初見の籠釣瓶花街酔醒。今まで観劇した歌舞伎の中で、一番構成に飽きがこない演目かもしれない。
めまぐるしく雰囲気が変わり、あっという間の2時間だった。
大らかなオーラを発する、浪人であっても凛とした菊五郎、百合のような気品を漂わせる菊之助、2人の親子共演も見もの。
序幕は華やかで滑稽、二幕目は不穏な気配がそろそろと漂い、三幕目は緊迫感のある人間模様、大詰めは恐ろしい刃傷沙汰。

いくら醜いあばた顔の男だとて、あれだけ虚仮にされては恨むというもの。
いや、醜いがゆえに自分の劣等感を超越するために、大らかさや思いやりを努めて持つようにしてきた人間ならば、非道い仕打ちへの反動は大きいものかもしれない。

同輩に「身の程知らずのほら吹き」と痛罵された次郎左衛門が痛々しく、九重の労わり、主人を罵倒された治六の憤慨が情けなさに拍車をかける。「振られた果報者」とつぶやく背中は涙を誘う

恐ろしいのはその場では悲しみにうちひしがれた次郎左衛門が、半年間どう生きてきたかということ。
平静を装いつつ復讐に胸を燃やしていたのは火を見るより明らかだが、心に渦巻いていた怨念が彼をじわじわと蝕んでいく様を想像すると、ああ怖い。
遠く離れた江戸で、八ツ橋は万事うまく収まったと胸をなで下ろしていたのだろうか。甘いよなぁ。

そもそも、事の起こりは八ツ橋が身請け話を受けてしまったことから。
間夫に黙って身請けしようという魂胆だったのか、断るつもりがぎりぎりまで引き延ばそうと思っていたのか。
この辺がはっきりせず、もどかしい。このもどかしさもまた、面白いのだけど。

吉右衛門の次郎左衛門がなめるように籠釣瓶を眺める様子は、何かに取り憑かれたよう。
大向こうのかけ声がなかったら、その恐ろしさに静まりかえっていたことだろう。

それもそのはず、籠釣瓶は実は妖刀村正
実は次郎左衛門は祟りによって顔が醜くなったんですね。
長男が遊女を身請けしたが、梅毒にかかっていたため惨殺。 
その後長男は祟り殺され、次男の次郎左衛門も祟りで顔が崩れた。

なんてまあ、酷い人生なのだろう。
祟りの憂き目にあった恨みと八ツ橋への恨み。村正の妖しに十分惑う背景がある。
上演されない部分が、歌舞伎は実に面白い。


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