国立劇場12月歌舞伎公演「今様三番三」「隅田春妓女容性」 [★伝統芸能]
●今様三番三(いまようさんばそう)
●隅田春妓女容性(すだのはるげいしゃかたぎ)
今回はどぶ側に座ったのですが、非常に面白かったです。
今様~では係員が「晒しを使いますのでご注意ください」とおっしゃっていて、どんなことが行われるのか楽しみでした。
すると、源氏白旗を盗んだ二の宮(雀右衛門)がくるくると晒しを翻しながら、警備の若武者を押し返すのです。その晒しがどぶ側にふわふわと漂ってきてとっても優雅!舞踊の中では一番好きな演目になりました。
続く隅田~。
こちらは100両があっちへこっちへ人の手に渡り、最終的には大団円になるのですが、100両を巡って様々な人間模様が繰り広げられ面白い。
〈あらすじ〉
かつて下総千葉家の重臣・三島隼人に仕えていた梅堀の由兵衛――梅の由兵衛。隼人の許から盗まれた千葉家の重宝を探索するとともに、同じ家中の金谷金五郎と駆け落ちして芸者になった隼人の娘・小三(こさん)を請け出そうと、旧知の信楽勘十郎の助力も得て、金策に奔走していました。由兵衛は、重宝を隠し持つ源兵衛堀(げんべ
えぼり)の源兵衛、その一味の土手のどび六らの企みを見抜き、喧嘩口論を戒(いまし)める頭巾を脱ぎ捨て、悪事の究明に乗り出します。
一方、由兵衛の女房小梅(こうめ)は、米屋に奉公する弟の長吉に、密かに小三の身請の金の工面を頼みます。数日後、由兵衛は偶然、顔を知らない長吉と大川端で出会います。そして、思わぬ行き違いで義弟を殺め、金を奪っ
てしまいます――。志半ばで自訴の覚悟を固める由兵衛。夫の罪を小梅は引き受けようとします。そうはさせまいと、由兵衛は源兵衛と対決して重宝を取り戻し、小三と金五郎をめでたく国許へ帰参させます。
・どび六、源兵衛 vs 由兵衛、小三&金五郎
どび六は身請け100両に困っていた金五郎と小三に「貸す」と言って偽金を渡して、借用書を書かせるんですね。で、身請けしますと置屋の店主に偽金を出した二人は、その場で偽金と知りびっくり。そのとき、どび六とその主の源兵衛は、「金を返せ」と逆に開き直り詰め寄る。
そこに主役・梅の由兵衛が現れて、二人の窮地を救う。由兵衛は信楽勘十郎から身請け代の100両預かっていて、それをここで使ってしまうんですね。
せっかくの身請け代、本来ならここで差し出して終了だったのに、等の若い二人がだまされて証文も書いてしまったから本当に目も当てられない。
5人の応酬を傍目で見ていた遊郭の主人、「それで誰が身請けするの?」と問うのが面白い。源兵衛は千葉家の重臣から家宝を盗んだ張本人なのですが、そのほかに何故これほど彼らを困らせるのかというと、実は由兵衛の妻・小梅を芸者の時代から好きだからなんですね。
100両手にしたのに偽の証文を渡して、こっぴどく由兵衛に懲らしめられるどび六ですが、懲らしめられるたびに医者に手相を見てもらったり、スラップスティックコメディの要素が満載です。
・長吉vs長五郎&お君
で、序幕の騒動のあと、二幕目は身請け100両問題は白紙に戻ってしまった。
100両手にしたのに偽の証文を渡して、こっぴどく由兵衛に懲らしめられるどび六ですが、懲らしめられるたびに医者に手相を見てもらったり、スラップスティックコメディの要素が満載です。
・長吉vs長五郎&お君
で、序幕の騒動のあと、二幕目は身請け100両問題は白紙に戻ってしまった。
当てのない由兵衛の妻・小梅が、気を利かせて米屋に勤めている弟・長吉に金を無心する。
米屋の娘・お君は彼に惚れているものだから、金を工面してやる。
ここに下働きの力士のなりそこない、お君に惚れている長五郎が嫉妬に駆られ、二人が100両盗んだことにする。ここでまた三角関係が絡むんですね。
その百両は実は信楽勘十郎が返済した100両。
すったもんだの末、長吉はなんとか米屋から出て姉に私に夜道をかける。
すったもんだの末、長吉はなんとか米屋から出て姉に私に夜道をかける。
そうとも知らぬ由兵衛、魔が差して彼をうっかり殺してしまい、100両を手にする。
信楽が返済した100両は長吉の手から、由兵衛へ渡ったんですね。
金を懐から出したのは実は勘十郎だけだというこの顛末。
見所は姉と弟の二役をこなした菊之助の早変わり。
御店の二階に弟の長吉、長吉からお金をもらいにきた外にいる姉。
少なくとも4回は早変わりしてました。
又五郎は吉右衛門と口舌がそっくりで、間違ってしまうほどです。
今回は又五郎がどび六、歌昇が長五郎役で、親子で三枚目を演じてました。
由兵衛の紫の頭巾はかつての主人の言いつけ「ならぬ堪忍、するが堪忍」の戒めなのですが、するっと脱ぎすて諸肌になると、赤い襦袢が見え隠れするのが婀娜っぽくていい。
吉右衛門は人間の業や情けなさを表現するのがうまいですね。哀れとみっともなさの中間というか線引きが上手。この演目、もっとやってもいいんじゃないのかな。
他にも階段を降りて客席へ入ったり、義太夫や浄瑠璃も含まれていて、娯楽要素満載のとても贅沢な作品でした。
コメント 0